IKEAで朝食
スウェーデンが誇る世界的家具量販店とは何か。そう、IKEAである(ちなみにスウェーデン発祥ではあるが本社はオランダにある)。
ストックホルム市内にもIKEAがある。ウィーンのIKEA Cityに感動したことを思い出し、見学も兼ねて朝食を食べに行った。ウィーンのIKEAカフェは広いスペースと効率化されたシステム、そしてテーブルゾーンとテラスゾーンに分かれ、さらにはStudyコーナーと名付けられた勉強や作業専用のスペースさえも用意されていた。これまでに訪れたIKEAカフェの中でぶっちぎりナンバーワンだった。
ストックホルムのIKEAにたどり着いて真っ先に抱いた感想は「えっここ…?」だった。狭いイートイン・コーナー、まばらな客、死んだ魚のような目をした店員。期待を大きく裏切られた。しかし市内の便利な場所にあるIKEAはそんなものである。ウィーンが異常だっただけだ。
せっかく来たので朝食を注文してみる。コーヒーとクロワッサンのセットは、ユーロに換算すると衝撃の90セントぐらいだった。しかしカフェラテが飲みたかったのと、もう少ししっかりとしたものを食べたかったので、カフェラテとフォカッチャの3,70€セットにした。それでも異様に安い。
撮った後で見切れていることに気づいたが『まぁいいや』と思って気にしないことにした。フォカッチャはチーズとトマトときゅうりが入っていて、予想よりも美味しかった。何だかんだ満足した。
ストックホルムのIKEAは大きなショッピングモールの一部になっていて、歩いてみるととてもおしゃれなカフェも見つかった。ここだけ見たら東京のよう。
非常に心を惹かれたが、Google Mapsのレビューは思いのほか酷評だった。どうやら生のフルーツを使ったスムージーを売りにしているのに、明らかに冷凍フルーツで作られたものが提供されたらしい。何ならスムージーが凍ってて飲めなかったという星1コメントも多かったので、たまたまでは無さそうだ。
出発してVasa博物館に向かう。
Vasa博物館
今回のストックホルム旅行で一番楽しみにしていたのがここ。17世紀に沈み、300年以上の時を経て引き上げられた船の博物館である。
宿の『ストックホルムでやることリスト』にも載っていた。
<写真>
バスでDjurgårdsbron駅(読めない)で下車し、数分歩くと到着する。
船の保存のため館内は年中18℃に保たれている。人によっては肌寒く感じるかもしれないので、何か羽織れるものがあるといいかも。自分はユニクロのライトダウンベストとポケッタブルパーカー持参していたので特に問題なく快適に過ごせた。
館内に入ってすぐ、その船体は圧倒的存在感で私たちの目に飛び込んでくる。その迫力を何とか写真に収めようとはしたが、実物を見た感動は全然違うので是非現地で直接見てほしい。
Vasa(ヴァーサ)は17世紀初頭のスウェーデン王グスタフ2世アドルフが、海軍力を強化するために建造を命じた。その名前は、当時のスウェーデン王朝「ヴァーサ王朝(Vasaätten)」にちなんで名付けられた。王朝の権威や威光を示すシンボルを背負い、敵であったポーランド・リトアニア連合への威圧を意識して、当時としては非常に大きく、装飾も豪華な戦艦として設計された。
何故そんな船が沈んでしまったのか。予備知識が全くなかったのでオーディオガイドを聴きながら館内を歩いたが、てっきり大きな戦いに敗れて沈没したのだと思っていた。
しかし違った。
Vasaは完成後初の航海で、たくさんの住民に見送られながら出発した。祝砲も盛大に上げながら。そして1500メートルほど進んだ先で強風に煽られ沈没した。
衝撃だった。オーディオガイドを2回ほど聞き直したが、自分の理解は間違っていなさそうだった。戦いに敗れたどころかそもそも戦っていなかった。館内は広く、その後は船の建設の様子や、設備及び施された装飾の説明が続いていたが、その全てが出発後1500メートルで無に帰したことを思うと、いたたまれなかった。
沈没の直接的な原因は、当時の理論が未発達で重心が本来あるべき場所より上に置かれていたこと、祝砲を上げるために開いた砲門から大量の水が流れ込んできたことによるらしい。
現代に生きる人々にとって幸運(というと語弊があるが)だったのは、Vasaが戦わずして沈没したことで、水中での保存状態が極めて良かったことだ。だからこそ300年以上経って引き上げられても当時の形を保っている。ボルトや小さな帆などは新しいものに取り替えられてはいるが、なんと船全体の98%は当時のままということだ。
この船を可能な限り後世に残すために様々な工夫がされている。館内には400ものカメラが設置されていて、何か異常があればすぐに発見できるようになっている。しかし船は本来水に浮かべるもの。緻密に計算された土台に乗せられてはいるが、1年に1ミリずつ沈んでいる。これを何とかするために、現在新しい土台を設計中とのことだ。
沈没後にまつわる話で印象に残ったものの1つだが、船内には戦闘用の設備や高価な装飾品が残されている。当然付近の有力者たちはそれらを回収しようとした。そこで考案されたのがこの装備である。
簡単にいうと、コップを裏返してその中に人を入れ、水に沈める。コップの内側は水が入らないので30分ぐらい活動できる。ひどい労働環境である。中に入れられた人は毎回寒さでガクガク震えながら引き上げられる。当時は船の理論だけではなく、労働法も整備されていなかったようだ。詳しくはこちらのパネルで説明されていた。
あとこの博物館に来てようやく気づいたが、スウェーデン(少なくともストックホルム)はトイレが男女で分かれていない。全てが個室で空いたところに次の人が入るシステムだ。最初は意味が分からず焦ったが、考えようによっては効率的な仕組みだと思う。日本でよく見る、女性側は行列で男性側がスカスカという状況が発生しない。ただ女性目線、男性と同じトイレというのは嫌な気がするが。